原野と自然に囲まれた町
アラスカからカナダへ入国して、最初に立ち寄った町は北西部ユーコン準州の州都ホワイトホースだった。
大自然に囲まれたこの町は、日本へ帰りたくなくなってしまうほど美しい。
町中にゆったりとした時間が流れているのは、町のはずれにカヌーイストの聖地・ユーコン川が流れているからかもしれない。
ユーコン川流域には、ゴールドラッシュ時代に金を採取するために使われた廃船や廃墟が当時の面影を残しておいる。
人工的な音は一切ない。
あまりにも静かすぎて、キーンという静寂の耳鳴りとも言えるような音が聞こえるほどだ。
“シンプル・イズ・ビューティフル”
ユーコンの大自然は何も語らず、こう教えてくれる。
ユーコン漂流
僕はひょんなことから、この町でたまたま出会ったバックパッカーの透君と、ユーコン川をカヌーで旅することになった。
ふたりで出発してからというもの、川のカーブを曲がるたびに思わず唸ってしまうような風景と出会う。
もう、写真を撮っている場合じゃない。
僕たちは、カメラのシャッターを切るのも忘れ、今、目の前にある光景を必死に脳裏に焼き付けていた。
こうして何日か下っていると、「フィッシュキャンプ」といって、インディアンがこの時期だけキングサーモンを捕るために川岸の小屋やテントで暮らしているところに出くわした。
僕たちは彼らに頼んで、サーモン漁に連れて行ってもらうことになった。
網を仕掛けてあるポイントに着いてみんなで網を引っ張ると、体長70センチはあろうキングサーモンが5匹もかかっていて、彼らは僕たちに切り身と卵をプレゼントしてくれた。
その夜、さっそくイクラ丼と刺身を醤油につけて食べた。
目の前にはユーコン川がゆったりと流れている。
最高のシチュエーションだった。
僕はこの日を一生忘れないだろう。
数えきれないほどの蚊の大群に襲われ、熊の恐怖に怯えながら迎えた8日目。
とうとう目的地の村へ辿り着いた。
8日ぶりのコーラで乾杯し、今度はホワイトホースへ向けてヒッチハイクをする。
僕たちを乗せてくれた運転手が、小汚い二人を見て「何をしてきたんだ?」と尋ねる。
「僕たちは、ユーコン川を8日間カヌーで旅してきたんだ!」
そう答えた透君は、何かを成し遂げた後の満足げな少年のような瞳をしていた。
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